Area-S ～エリア-エス～

ナズーリン「まったくまいったよ。こうも急に天気が変わるとはね、しかもずいぶんな土砂降りだ」
寅丸星「すいません、ナズーリン……」
「別に失せ物探しを頼まれるのはかまわないさ、頼りないご主人の脇を固めるのが私の仕事だからね」
「本当にいつもありがとうございます、私がしっかりと毘沙門天様の代理を務めていられるのもあなたのおかげですね！」
「……こうしてびしょ濡れになりながら幻想郷中駆け回ってあなたの落し物を探し回る部下に少しでも感謝やねぎらいの念を感じてくださるなら、今度こそ失くし癖は治してもらいたいなぁ」
「ううぅぅ……すいません……」
「素直に感謝も反省もしてくれるんだけどそれが次に活きないんだよなぁご主人は」

「…………」
「……？　ご主人、私の顔に何かついてでもいるかな、そんなまじまじと見てられると居心地が悪いのだけれど」
「あ、いえ……ごめんなさい。なんだかいつもと少し雰囲気が違うかなって……思ったんですけれど」
「雰囲気……さすがにそういうものは客観的に自分で把握するのは難しいなぁ。なんだろう」
「なんだかすごくしっとりしている、っていうか」
「そりゃぁこれだけ雨に降られて下着までしたたるほどになればしっとりどころかびっしょりだろうね」
「あわわゎ、ごめんなさい……！」
「……髪、じゃないかな。私はくせっ毛が強いから。乾いてるときはいつも変にはねてしまうのが、濡れてるとそのまま下に落ちるから」
「あぁ！　なるほど、それでかー。なんだかいつも以上に大人びて見えた気がしたのはそのせいでしょうかね」
「……それ、いつもは子供っぽく見えてるって解釈できるけどそうでいいのかな？」
「いやいやいや！　そんなことはないんですよ！？　いつもだってあなたはちっちゃいのにいつも私よりしっかりしてて頼りになってくれて……！」
「ちっちゃいは余計。ご主人はもう少し落ち着いて口も手も動かしたほうがいいと思うね」
「うぅぅぅぅぅ」
「……ご主人は、さ」
「はい？」
「こっちのほうがいいと思うのかい？　その、髪が変にはねるよりまっすぐなほうが、さ」
「え？　えーとどうでしょう、いつもと違って新鮮だなーって。いつものあなたも可愛らしいと思いますが今の姿もきれいですよ」
「ご主人はどっちのほうが……好きなのさ、いや髪形の話だけど」
「え、えーとうーん……ナズーリンはどっちでもとっても似合ってますよ！　大丈夫です！」
「大丈夫って何が大丈夫なんだか……まぁうん、いいや。なんでもない、たいした意味はないから」
「そうですか？　ならいいんですが……えっと、本当に私はどんなナズーリンも素敵だと思います」
「（……ありがとう）」
「え？」
「いや何も。次からもう失せ物は勘弁って」
「うぅぅぅぅ～」


◇◆◇◆◇

東方星蓮船よりナズーリン。
くせっ毛の女の子が雨に濡れたりお風呂上りとかにびしょ濡れで髪質が変わってたりしたらちょっとキュンとこねぇ？とか思って描いたラクガキ。
他にもいつもは編んだりまとめたりしてる髪を寝る前にほどいてるとか、「いつもと違う髪形」ってそれだけでこうぐっっとくるものがあると思うんですよ本当にマジで。

ラクガキのざざっと描いた絵だけじゃ、俺の腕ではたいした魅力も備わるまいと思い、焼け石に水というかむしろ蛇足な感じの雑文を添えてみたり。
ナズ星はアブソリュートジャスティス。